1 兆ドルコーチ ―― シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え
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読書開始 : 2020-04-xx
読書終了 : 2020-05-03
TL;DR
企業が成功するためには 「コミュニティ」 として機能するチームが重要
勝手にはできないのでマネジャーの存在が重要
オペレーショナル・エクスペリエンス (現場の業務遂行力が競争上の優位性を持つレベルにまで高められている状態) の実現が第一
人材を最優先し、強力に業務を押し進める
決断をする
信頼・チーム優先
愛 : ビジネス上だけの関係性だけじゃなく、人間同士としての関わり
信岡メモ・感想 nobuoka.icon
部下や同僚、ときには上司をコーチする責任は我々にある
ためになる言葉をかけるのがメンターであるのに対して、コーチは腕をまくりあげて自分の手を汚す。 メンターよりさらに踏み込む
企業が成功するには、素晴らしいプロダクトを生み出し続ける必要がある
さらに追加で重要なのが、「コミュニティ」 として機能するチーム (会社のためになることに、個人としても集団としても全力で取り組む)
人は職場の協力的なコミュニティの一員だと感じると、仕事に対する意欲が高まり、生産性が上がることが、研究により示されている
ハイパフォーマンスなチームには当然ながら頭が切れ、攻撃的で、野心的で、意志が強く、はっきりした意見を持つ、自尊心の強い人たちがそろっている。彼らは一緒に働いてはいるが、昇進を争うライバルかもしれない。また幹部であれば、より多くの資源や栄誉を得ようとして、自分の部署などをほかと競い合わせる——これを「地位葛藤 (ステータス・コンフリクト)」という——こともあるだろう。 次の高みをめざす人たちにとって、個人的な目標を、チームを成功させるという目標と並行して、または優先して追求したい誘惑には相当なものがある。かくして内部競争が主役になり、報酬やボーナス、表彰、ときにはオフィスの大きさや場所さえもが優劣を競う手段になる。
これは大問題だ。そうした環境では、利己的な人が利他的な人よりも有利になることがあるからだ。こうした「集団内」の対立がチームのパフォーマンスに悪影響を与えることを、いくつもの研究(と常識) が示して いる。
本書で考えるビルのコーチング : 何をコーチしたか (コーチングの内容) とどうやってコーチしたか (コーチングの方法)
次の4つに分けて説明
まず、ビルはスタッフとの1 on 1ミーティング(個別面談) や、むずかしい従業員への対処といったマネジメントスキルを、どうやって細部に至るまで正しく実践していたか
第 2 に、ビルは一緒に働く人たちとどうやって信頼関係を築いていったか
第 3 に、彼はどうやってチームを構築していったか
最後に、ビルはどうやって職場に愛を持ち込んだか
マネジメントについて (2 章)
実際にはマネジャーを置いた方がよかった
どちらもメリットはある
1991 年の研究 : 企業はイノベーションの実装段階にあるとき (グーグルが検索エンジンやアドワーズを開発していたときなど)、資源を有効に配分し対立を解消するために、マネジャーを必要とする 2005 年の研究 : 階層型の組織よりもネットワークを基盤とする環境のほうが、人材の創造性を高める (創造性と業務効率は、つねに緊張関係にある) リーダーは部下が作る
マネジャーが指示したからといって従ってもらえるとは限らない (部下が有能であるほど、単純に指示に従う可能性は低い)
「肩書があれば誰でもマネジャーになれるけど、リーダーを作るのは部下」
マネジャーの権威は、部下や同僚、上司と信頼を築くことによって作られる
人がすべて。 どんな会社の成功を支えるのも、人
マネジャーのいちばん大事な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すこと 優秀な人材は、持てるエネルギーを解放し、増幅できる環境でこそ成功する
あらゆるマネジャーの最優先課題は、部下のしあわせと成功
マネジャーは 「支援」 「敬意」 「信頼」 を通じて、その環境を生み出すべき
「支援」 : 彼らが成功するために必要なツールや情報、トレーニング、コーチングを提供すること
彼らのスキルを開発するために努力し続けること
「敬意」 : 一人ひとりのキャリア目標を理解し、彼らの選択を尊重すること
会社のニーズに沿う方法で、彼らがキャリア目標を達成できるよう手助けをする
「信頼」 : 彼らに自由に仕事に取り組ませ、決定を下させること
彼らが成功を望んでいることを理解し、必ず成功できると信じることだ。
旅の報告から始める
チームメンバーの連帯感を生み出し、高めるために、旅の報告など仕事以外のプライベートな話題からスタッフミーティングを始める
目的
チームメンバーが、家庭や仕事外の興味深い生活を持つ人間同士として、お互いを知り合えるようにすること
全員が特定の職務の専門家や責任者としてだけでなく、一人のグーグラーや人間として、最初から楽しんでミーティングに参加できるようにすること
楽しい職場環境が高いパフォーマンスと相関しており、そうした環境をてっとり早く生み出す方法は家族や楽しいことについて話すこと (学者の言う 「社会情動的コミュニケーション」) コミュニケーションが会社の命運を握る / 知識の共有化
「君たちが理解していることを社員全員にしっかり理解させろ」
2020 年のサザンメソジスト大学の研究 : 「誰に何を伝え、共有すべきか」 を知ることが、マネジャーの重要な仕事
正しくやればチームのパフォーマンスを高める効果がある
「1 on 1 を正しくやる」 と 「スタッフミーティングを正しくやる」 が、ビルのマネジメントの最重要原則の筆頭
この 2 つのミーティングは、幹部が会社運営に利用できる最重要ツールで、それぞれを思慮深く行う必要がある
スタッフミーティングは 1 on 1 以上に、最も重要な問題と機会について話し合う場
「全員に共通認識を持たせ、適切な議論を行い、意思決定を下すために、ミーティングを利用するんだ」
重要な問題のほとんどは複数の部門に関わる問題
全員が一堂に会して、ほかのチームで何が起こっているかを理解し、集団でそれを議論することによって、共通認識ができあがり、部署の垣根を越えた協力関係が生まれる
チームミーティングはメンバーの積極的な関与を促すのに最適な場
2013 年の研究は、ミーティングにおいてメンバーの積極的な関与を促すには 「適切なミーティングを行う」 「全員に発言権を与える」 「時間管理を徹底する」 といった要素が重要だと指摘
1 on 1 では議論すべき話題を互いに 5 つ挙げる
1 on 1 では銘々がボードに自分のリストを書き、二人で同時に手札を見せ合う
何が共通しているかを二人で確認でき、それらのトピックをもれなく取り上げることができる
また、二人のリストを一つにまとめることが優先順位づけの練習になる
無駄話から始める
雑談だけど意味のあるプライベートな話題
(2010 年の研究) 「意味のある」 会話はただの雑談に比べて幸福感を高める効果が高い
仕事の進み具合の話 (何に取り組んでいるんだ? うまくいっているのか? 何か力になれることは?)
同僚との話題 (同僚の意見に注意を払え。 チームメイト同僚たちがどういう評価をしているか、その評価をよくするには?)
チームの問題 (チームに関して明確な方向性を定めているか? それをことあるごとに強調しているか?)
イノベーションに取り組めているか? イノベーションと業務遂行の本質的な対立にどう折り合いをつけているか?
どちらか一方ではだめ
円卓の 「背後」 に控える
チームがむずかしい決断を迫られたとき : 「二頭体制」 と名づけた方法を採った (エリック) 決定に最も深く関わる二人にさらに情報を集めさせ、二人で協力して最適なソリューションを考えさせる
たいていは 1、2 週間後に 2 人で方針を決めて、チームが決定に従う (それが最善というのが一目瞭然)
二頭体制は最適解をもたらすだけでなく、同僚意識を高めるというメリットもある
対立解消に関する研究によると、「二頭体制」であれ何であれ、対立に対処するための標準的手順を設けることには、チーム全員の満足度を高め、実力を発揮させやすくする効果がある
決定を促すことがマネジャーの主な仕事の一つ
ビルは民主主義を好まず、キャスト全員が入れ替わり舞台に立つという即興コメディのようなアンサンブルな状態を好んだ
「アンサンブル」 の状態 (適材適所でリーダーたちが有機的に入れ替わり、適宜チームを率いていくこと) で、駆け引きのない環境が保たれるように気を配る
経営トップがすべての決定を下すようでは、その正反対の環境になってしまう
部下は自分のアイデアをマネジャーに認めさせることに終始するため
そうした環境では、最適解ではなく、最高権力者へのロビイングに長けた者 (政治) が勝利を収める
コンセンサスではなく、最適解を得ることを重視 (「コンセンサスなんかクソくらえだ!」)
議論に対するリーダーのスタンスも重要
白熱した議論を、意見の 「衝突 (食い違い)」 ではなく 「討論」 と呼ぶと、反論に寛容な雰囲気が生まれ、情報共有が促される (2016 年の研究)
アンサンブルの姿勢を取るのがとくにむずかしいのが、意思決定を担うマネジャーが、何をすべきかをすでに知っている (または知っていると思い込んでいる) とき
マネジャーは最後に発言する
最適解が生まれない場合、マネジャーは決定を促すか、みずから決定を下す
「マネジャーの仕事は議論に決着をつけることと、部下をよりよい人間にすることだ」
「『この方針で行くぞ。下らん議論はおしまいだ。以上』と宣言するんだ」
まちがっていてもいいから、とにかく行動を起こせ
決定を導くための適切なプロセスがあることは、決定そのものと同じくらい重要
そうしたプロセスがあれば、チームは自信を持って前進し続けることができる どんな状況にも、誰もが納得できる不変の真理
シリコンバレーでよく使われる用語・コンセプト
第一原理はどんな会社にも、どんな状況にも存在する
困難な決定を迫られたとき、そうした第一原理を全員に説明し、思い出させることがリーダーの役目 (決定を下しやすくする)
具体例 : 買収話が出てきたときに、その買収が本当に良いのか、みたいなところ
自社の成功している堅実なビジネスモデルがあるのに、新たなライセンスビジネスに手を出すのが賢明か?
買収先が、自社より優れたプロダクトを開発できるのか?
これって原理なのかな?? nobuoka.icon
ケタはずれに有能だが、仕事がやりにくい社員 (いわゆる 「ディーバ」 (傲慢なスター)) マネジャーが抱える最も厄介な問題の一つ
寛容であるべき。 守ってあげさえするべき
ただし、倫理に反する行動や人を傷つける行動をせず、経営陣や同僚へのダメージを上回る価値をもたらす限りにおいて
注目を求めるのはナルシシズムの特徴の一つで、ナルシシストは (ほかの条件が同じなら) グループリーダーとして頭角を現しやすい (2008 年の研究)
注目を求めるメンバーをリーダーに持つのは、それほど悪いことではないかも
一方で、リーダーはチームの成功よりスポットライトを浴びることに関心があるのだろうかと、チームメンバーが疑心暗鬼になるようなら問題
ビルは、常に気前よく払うことを勧めた
報酬は会社が承認、敬意、地位を示すための手段
人々を会社の目標に強く結びつける効果
人は誰もが真価を認められたい生き物 (経済的に安泰な人も、例外ではない)
会社の存在意義は、プロダクトのビジョンを実現すること スピードが肝心
財務やセールス、マーケティングのチームが、プロダクトチームに対してやるべきことを指図してはならない
これらのチームは、顧客のどんな問題を解決する必要があるか、どんなビジネスチャンスがあるかといった情報提供に徹すべし
プロダクト・マーケット・フィットの 「マーケット」 に当たる
それ以外では脇に下がって、プロダクトチームに仕事をさせ、彼らのスピードを阻みそうなものを取り除いていく
信頼について (3 章)
業績低迷時
取締役会 : 短期目標は長期的成長ほど重要ではない、投資を抑制すれば長期的な成長力が失われる
ビルは反対
スリム化を図ってでも数字を達成したい、それが自分たちのめざす文化
ビルと取締役会が対立する中、ジョン・ドーアは 「ビルを支持すべき」
ビルを信頼していたから、議論よりもビルが強く望むならビルに賭けてみようと思った
ビルにとって、仕事上でも、信頼はつねに最優先かつ最重要の価値観
どんな人間関係でも信頼は大切だが、仕事上の関係ではほとんどの場合、信頼は個人の価値観の追求やギブアンドテイクといったさまざまな考え方の一つのように見なされている
信頼とは多面的な概念だが、ここで言う 「信頼」 とは? ある学術論文は、信頼を 「相手の行動へのポジティブな期待に基づいて、進んで自分の脆さを受け入れようとする心理的状態」 と定義
要は信頼している相手には安心して自分の弱さを見せられる、ということ
信頼とは、つねに意見が合うということではなく、むしろ、信頼している相手には異を唱えやすい
信頼はあらゆる関係の基盤
たびたび引用されるコーネル大学の 2000 年の論文 : チームにおける 「課題葛藤」 (決定に関する意見の不一致) と 「関係葛藤」 (感情の行きちがい) の相関関係 課題葛藤は自体は健全なものであり、最善の決定を導くために必要 だが、課題葛藤が高まると、まずい意思決定や士気低下を招きかねない関係葛藤も高まる傾向 ではどうすればいいのか? → まず信頼を築け
ビルが求めたコーチャブルな資質 : 「正直さ」 と 「謙虚さ」、「あきらめず努力を厭わない姿勢」、「つねに学ぼうとする意欲」
正直さと謙虚さが必要な理由 : コーチングの関係を成功させるには、ビジネス上の関係で一般に求められるよりも、 はるかに 赤裸々に自分の弱さをさらけだす必要があるから
コーチは教える相手がどれだけ自己認識ができているかを知る必要がある
コーチは相手の強みと弱みを知るだけでなく、相手が自身の強みと弱みをどれだけ認識しているかを知らなくてはならない
こうした姿勢が高い企業業績に直接結びつくという研究成果 : サーバント・リーダーを CEO に持つテック企業は ROA (総資産利益率) が相対的に高く、ナルシシストの CEO を持つ企業は ROA が相対的に低い
いま向き合っている相手に細心の注意を払うことの大切さ (相手に全神経を集中させ、じっくり耳を傾けることの大切さ)
山のような質問を伴った、ソクラテス式の対話
発見や洞察を促すような質問
自由回答式の質問をして返答にじっくり耳を傾ける話し方 (リーダーの 「敬意のこもった問いかけ」) は相手の下記のものを高める
有能感 : 自分は試されていて、それに応えることができるという感覚 自立性 (自律性?) : 自分が状況をコントロールし、選択しているという感覚 フィードバックはすぐに行う
多くのリーダーはフィードバックを人事考課のときまで待つが、それでは足りないし遅すぎる
ビルは決定的瞬間 (またはその直後) に、その問題に的を絞ったフィードバックを与え、それから必ず満面の笑みとハグを与えて心の痛みを和らげる
すべきことを指図しない
ビルは、マネジャーはこうしろああしろと頭ごなしに言うもんじゃないと考えていた
「何をするかを指図するな、なぜそれをやるべきかという物語を語れ」
方法を伝えるのではなく、物語を伝える
親身になるべきか、厳しくすべきかのジレンマ
リーダーシップでも子育てと同じ : 本当は親身になりつつ、厳しく挑戦を促すべき
高い基準と期待を示し、それに到達できるよう励ましを与える
愛のムチ
耳を傾け、フィードバックを与え、相手にも率直であることを求めるビルの手法 : 関係の透明性 表向きは無愛想で扱いにくいが、内心は相手のためを心から思っている
誰もが聞きたくないが誰もが聞く必要のある、批判的なフィードバックをあえて与える人たち
勇気の伝道師
つねに励まし続けること、力を与える人でいることが、有効なコーチングの最も重要な側面の一つという研究結果
イギリスのアシュリッジ・ビジネススクールによる 2011 年の研究 : コーチに最も求められる特質に、「聞く力」 「理解する力」 に次ぐ第 3 位に 「励まし」 を挙げている
チームファースト (4 章)
チームを勝たせることが最優先事項でなくてはならない。 これを最もうまく言い表したのが、チャールズ・ダーウィンの著書 『人間の由来』 の一節だろう。 「成員の多くが高い愛着心と忠誠心、服従心、勇気、思いやりを持ち、つねに助け合い、全員のために自分を犠牲にする覚悟がある部族は、ほかの多くの部族に対して勝利を収める。 これが自然淘汰である」 問題や機会に直面したら、最初のステップは、 適切なチームを適所に置いて問題に取り組む
マネジャーは目の前の問題にとらわれがち。 「状況は? 問題は? 選択肢は?」
コーチはより本質的な質問でチームを導く : 誰が問題にあたっている? 適切なチームが適切な場所に配置されている? 必要なものはそろっているか?
ビルが人に求めた 4 つの資質
「知性」 : これは勉強ができるということではなく、さまざまな分野の話をすばやく取り入れ、それらをつなげる能力を持っていること ビルはこれを 「遠い類推」 〔かけ離れたものごとをつなげる発想〕 と呼んだ
「グリット」 を持っていること : 打ちのめされても立ち上がり、再びトライする情熱と根気強さ ビルが最も嫌ったのは、学ぶことをやめた人たち
質問するより答えるほうが多い? それは赤信号
ペアで業務に取り組ませることで、同僚間の信頼関係をはぐくむ
普段業務で組まない 2 人をペアにする、など
積極的にペアを組ませる
「悲観ムードになったら、ストレスの根本原因を突き止め、それに働きかけろ。 ただしそれだけにかかずらっていてはいけない。不満大会を長引かせるな」
これに対するものが 「情動中心型コーピング」 : 状況の捉え方を変えることによってストレスに対処する方法 解決が不可能な問題に取り組むときに有効
ビジネスでは、感情への対処と発散は手短にして、問題解決にエネルギーを注ぐ必要がある
ビルのアプローチは、つねに冷静で前向きな姿勢を保ち、いますぐやらなくてはならないことに集中するというもの
何が起こったかでも、誰が悪いのかでもなく、それについてどうするかに集中する
ちょっとした組織内の小さなヒビに気づくこと
とっさの発言や、急いで書いたメールやメッセージが、感情を悪い方向に走らせることがある
「耳を傾け、目をこらし、理解やコミュニケーションのギャップを埋めるんだ」
負の感情や緊張に、小さな声かけが大きな効果
悪い知らせの伝え方に関する研究のほとんどは、うまく伝えるには共感力がカギを握ることを示している。 患者に悪い知らせを伝えなくてはならないがん専門医を対象とした 2000 年の研究は、「(共感を示すことによって) 感情が一掃される」 までは、治療計画の話し合いに進めないと指摘する。
全員が、個人の利益よりチームの利益を優先させる覚悟を持つ
こうした熱意があればこそ、チームは偉業をなし遂げられる
問題に直面すると、問題そのものではなく、問題をまかされたチームについて考える
チームをよい状態に持っていけば、必ず問題をうまく解決することができる
愛について (5 章)
温かさと有能さのあいだには、互いを打ち消し合う 「相殺効果」 がある
一般、温かい人は能力が低く、冷たい人は能力が高いと見てしまうことが多い
人はビジネスシーンには私情を持ち込まないよう教えられている
ビルは、人間の部分と仕事の部分を分けず、どんな人もまるごとの人間として、扱った
そして彼らの一人ひとりをひたむきに、心から大切にした
ビルはチームのコーチであり、人間を愛した人だった。 どちらか一方だけではダメなのだと、彼に教えられた
「慈愛」 (思いやりと慈しみ) に満ちた企業は、従業員満足度とチームワークが高く、欠勤率が低く、チームの成績が高い
「人を大切にするには、人に関心を持たなくてはならない」
「ビル・キャンベル手拍子」 (BCC) : 誰かがミーティングで何かよいことを発表すると、全員で大きな手拍子を 5 回 チームへの愛を示すこと、また、応援でもある
ビルが仲間と行ったどの旅行も、目的は旅そのものではなく、コミュニティをつくること
仲間を長く続く絆で結びつけ、社会学者の言う 「社会関係資本」 を生み出すための旅行
アダム・グラントの 『GIVE & TAKE 「与える人」 こそ成功する時代』 で説明
親切をする側にとっては簡単で、負担もほとんどかからないが、受ける側にとってはとても大きな意味のあるものごと
「成功するギバーになるということは、誰にでもいつでも何でもしてあげるということではない。自らの負担より、他人を助けることのメリットが上回るかどうかを意識する必要がある」
これをうまくやる人を、グラントは 「自己防衛的なギバー」 と呼ぶ
「寛大だが自分の限界を自覚している。頼みごとにむやみにイエスと言わず、寛大な行動を楽しみながら持続できるよう、小さな負担で大きなインパクトを与えられる方法を 探す」
創業者への愛
会社を起こすガッツと才能のある人たちは、ビルの心の特別な場所を占めていた
毎日が圧倒的に不利な状況での生死をかけた闘いだと理解するだけのまともさと、自分は絶対成功できると信じるだけのクレイジーさを持ち合わせた人たち。 こうした人材をつなぎとめておけるかどうかが、あらゆる会社の成否を分ける
一般に、企業経営者の仕事は業務運営と考えられている
ビル自身もオペレーショナル・エクセレンス(現場の業務遂行力の卓越性) をことに重視
だが企業におけるリーダーシップを、業務のエッセンスの観点のみで捉えてしまうと、きわめて重要な要素である「ビジョン」が抜け落ちる
プロ経営者を迎えれば、会社運営はうまくいくかもしれないが、会社の心と魂——会社を前進させるビジョン——は失われることが多い
ビルは創業者を愛したが、起業を試みた彼らの大胆さを愛したというよりは、彼らが事業に対して持っているビジョンと愛情を愛した
外部 CEO と創業者のペアリング
スタートアップ以外の企業のリーダーは、創業者がとうの昔に会社を去っているから、ほとんどの場合、こうした問題に対処する必要はないが、それでも創業者を大事にすべき重要な理由を忘れてはならない
ビジョンは重要な役割を果たす : 会社には心と魂が必要
本書で述べてきた取り組み : もともとあまり外向的でない人は練習すればよい
ものさし (6 章)
ビジネスを成功させるには?
コミュニティとして機能するチームが欠かせない
個人的な利益よりもチームの利益を優先させ、会社にとってよいことや正しいことを徹底的に追求するチーム
こうしたコミュニティは、とくに有能で野心的な人たちのあいだには自然に生まれないため、コーチ、それもチームコーチの役割を担う人の介在が欠かせない
チームのコーチに最もふさわしいのは、チームのマネジャー
すぐれたマネジャーやリーダーでいるためには、すぐれたコーチでいなくてはならない
コーチングはもはや特殊技能ではない
めまぐるしい変化と熾烈な競争が渦巻く、テクノロジー主導のビジネス界で成功するには、パフォーマンスの高いチームをつくり、とてつもないことを成し遂げるための資源と自由を彼らに与えなくてはならない
ビルはマネジメントの技術を磨き、単純な行動の積み重ねにより業務を強化することの大切さを力説した
人材を最優先し、強力に業務を押し進めるマネジャーは、部下によって 「リーダー」 と見なされる
ビルは思慮深く一貫したコミュニケーションの手法を持っていた
決断力を重んじ、力のあるマネジャーは議論のフェーズが終わったと判断すれば、みずから決断を下すべき
どんな人にも、人間として大切にしているものがある
愛、家族、お金、注目、力、意味、目的など
これらはどんなビジネスシーンにも関わる要因
すぐれたチームをつくるには、こうした人間的なものごとの価値を理解し、注意を払う必要がある
これらは年齢や地位、立場にかかわらず、あらゆる人の一部をなす
人間的価値を高めることがビジネスの成果をもたらす
このつながりが理解できていないビジネスリーダーは非常に多い
だからこそ、すべての人がいますぐこの手法を学ぶべき
訳者あとがき
その意味で本書はその続編として読むことができる